健康保険法施行規則 第51条
誰が、誰に返すのか
第51条は「返す」という動作を、項ごとに主語を変えて書いています。 ここを読み分けないと、本来は勤め先に渡せばよいものを自分で保険者へ送ってしまったり、 逆に、自分で送らなければならない立場なのに会社に渡そうとして行き場をなくしたりします。 条文の原文を、主語ごとに並べます。
3通りしかありません
| あなたの立場 | 渡す相手 | 期限 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 会社を退職する (いちばん多い形) | 勤め先(事業主) | 5日以内 | 第51条第4項第1号 |
| 任意継続被保険者を やめる | 保険者 協会けんぽ・健康保険組合 | 5日以内 | 第51条第2項 |
| (会社側の動き) | 保険者 | 遅滞なく | 第51条第1項 |
「本人 → 勤め先 → 保険者」という二段構えになっているのが、この条文の構造です。 本人が保険者へ直接送る形は、任意継続の第2項にしか出てきません。
原文(2026-09-06 取得)
第1項 —— 主語は「事業主は」
事業主は、次に掲げる場合においては、遅滞なく、資格確認書を回収して、これを保険者に返納しなければならない。 この場合(被保険者が任意継続被保険者である場合を除く。)において、協会に返納するときは厚生労働大臣を経由して行うものとする。 一 被保険者(資格確認書の交付を受けているものに限る。以下この条において同じ。)が資格を喪失したとき。 二 被保険者の保険者に変更があったとき。 三 被保険者の被扶養者が異動したとき。 四 第二十九条の二第一項の届出を行うとき。
保険者に返納する義務は、ここで事業主にかかっています。 「協会に返納するときは厚生労働大臣を経由して行う」という一文も、事業主がどう返すかの話です。 退職する本人がこの経路を自分でたどる必要はありません。
第4項 —— 主語は「被保険者は」、相手は「事業主に」
被保険者(任意継続被保険者を除く。以下この項において同じ。)は、次に掲げる場合においては、五日以内に、資格確認書を事業主に提出しなければならない。 一 被保険者の資格を喪失したとき。 二 被保険者の保険者に変更があったとき。 三 被保険者の被扶養者が異動したとき。 四 被保険者が共済組合の組合員の資格を取得したことにより、適用事業所(当該共済組合に係るものを除く。)に係る法第二百条第一項及び第二百二条の規定の適用を受けるに至ったとき。
退職する本人の義務はこれです。5日以内に、事業主に提出する。第1号が「被保険者の資格を喪失したとき」で、退職はここに当たります。 条文の冒頭に「任意継続被保険者を除く」と書かれているとおり、 この項は在職中の被保険者だった人の話です。
第2項 —— 任意継続だけは本人が保険者へ
前項の場合において、被保険者が任意継続被保険者であるときは、当該被保険者は、五日以内に、これを保険者に返納しなければならない。
任意継続被保険者にはもう勤め先がないので、経由する事業主が存在しません。 そのため本人が直接、5日以内に保険者へ返します。任意継続を選んだ場合は、やめるときにこちらの項に移ることを 覚えておいてください。
第3項 —— 会社が急ぐ理由がここにあります
第一項第一号(被保険者が任意継続被保険者である場合を除く。)又は第四号に掲げる場合において事業主が返納すべき資格確認書は、やむを得ない場合を除き、資格喪失届(同号に掲げる場合にあっては、第二十九条の二第一項の届書。以下この項において同じ。)に添えなければならない。 この場合においては、その理由を資格喪失届に付記しなければならない。
事業主が返納する資格確認書は、資格喪失届に添えなければならないとされています。 そして届出そのものにも期限があります。
法第四十八条の規定による被保険者の資格の喪失に関する届出は、当該事実があった日から五日以内に、様式第八号又は様式第八号の二による健康保険被保険者資格喪失届を機構又は健康保険組合(様式第八号の二によるものである場合にあっては、機構)に提出することによって行うものとする。 この場合において、協会が管掌する健康保険の被保険者が同時に厚生年金保険の被保険者の資格を喪失したときは、個人番号又は基礎年金番号を付記しなければならない。
健康保険法施行規則第29条により、事業主の資格喪失届は事実があった日から5日以内です。 会社は5日以内の届出に現物を添えたいので、あなたの手元にある間は届出を完結できません。 退職の直後に総務から連絡が来るのは、たいていこの2つの条文が理由です。 なお第3項には「やむを得ない場合を除き」という留保があり、 添えられないときはその理由を資格喪失届に付記すると書かれています。 つまり現物が出せないときの扱いも、条文の中に用意されています。
そもそも「返すもの」が無い場合
第1項第1号は、返納の対象を「資格確認書の交付を受けているものに限る」と限定しています。 資格確認書は、次の条文により求めた人に交付されるものです。
被保険者又はその被扶養者が電子資格確認を受けることができない状況にあるときは、当該被保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に対し、当該状況にある被保険者若しくはその被扶養者の資格に係る情報として厚生労働省令で定める事項を記載した書面の交付又は当該事項の電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって厚生労働省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)による提供を求めることができる。 この場合において、当該保険者は、厚生労働省令で定めるところにより、速やかに、当該書面の交付の求めを行った被保険者に対しては当該書面を交付するものとし、当該電磁的方法による提供の求めを行った被保険者に対しては当該事項を電磁的方法により提供するものとする。
健康保険法第51条の3第1項です。「電子資格確認を受けることができない状況にあるとき」に、本人が保険者に求めて交付を受ける、という組み立てになっています。 交付を受けていなければ、第51条が返せと言っている物は手元にありません。
マイナンバーカードそのものは健康保険の持ち物ではないので、返却の対象にはなりません。 一方で、判断に迷うカードや書面を自分で処分するのは避けてください。 返すかどうかを決めるのは条文の側で、迷ったら勤め先に渡せば、 第4項の「事業主に提出」を満たしたうえで会社側が仕分けします。
第51条の全文(第5項=死亡した場合を含む)は 当サイトが取得に使ったAPIの呼び出し先でそのまま確認できます。
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